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2017/03/17 23:35
SFは社会から考える。二の次から考え始めるものにガジェットやキャラクタがあり、これらは背景である社会設定から発想されていくという順番らしい。

 

それでも、キャラクタの魅力は、もしかしたら、設定以上に、作品の質感を大きく左右する要素になっている。物語のために存在するキャラクタにどう試練を与えるのか考える、というアプローチで社会やガジェットといった設定を決めていくということもあるだろう。SF的な手法とは逆に、キャラクタを先頭にして物事を決めていくというやり方だ。

 

SAOは作者の川原れき曰く、後者のやり方らしい。自分はSF作家ではないという川原氏にとって、フィクションはストーリーありきであるという。氏の作品では、社会という静止画の叙事を描くというよりも、映像的な物語で叙情を生み出すためにためにすべての要素が練られているという。

 

そうしてできたストーリーはキャラクタを駆動するために作られた、一種の装置だ。設計された装置はキャラクタに作中での状況を逐一入力して、行動を促す。芝居をつけるうまさがあればこそだが、キャラクタの魅力的な見栄が出力されることで、作品の表面の質感は整えられていく。クールで未来的なグラフィックでも難解な作中用語でもなく、キャラクタの顔と体でラッピングされたSAOは、というかエンタメの殆どかもしれないけど、この場合とても眼に優しいテクスチャをぼくたちに見せてくる。

 

ヒロインピンチが嫌いな人はなく、アスナをなんとか危機に陥れたいなあ、とは作る側のおっさんなら誰もが思う。そしてキリトくんがかっこよく助けにくる!それでいいのだ。すべては物語のために存在し、物語はキャラクタのために存在しているのだから。

 

クールな見た目のARデバイス、オーグマーくんは、アスナをピンチに陥れるための機械としてデザインがスタートしているらしい。その機能としては、最新技術の網膜投影で仮想世界を現実にオーバーレイ、かっこいい。でもそれは機能であり目的ではない。敵にやられちゃうアスナのピンチを描く舞台を誂える、これが目的。

 

未来的でありながら、ありえるかも、という納得さえしてしまう見た目の裏に、おっさんの欲望が詰まっているのがオーグマーくんだけども、産まれはいい。なんたってソニープロダクトデザイナー細田育英がデザインをしているのだ。トヨタでレクサスのデザインも担当していた氏にとっては、フィクションの小道具デザインは今回が初めてだったらしいけど、贅沢な人選だ。

 

ヒロピンのためにデザインされたガジェットなんて、劇場に見に行くしかない!って気にさせる。