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2016_4_12

はじめに3Dプリンタがあった。3Dプリンタは物体であり、物体は3Dプリンタであった。物体はまず立体なのだからありそうなことだ。

 

大学を出た年の四月十二日に、ぼくは市ヶ谷駅において、見送りの場で、教授に言われた。「お前はとりあえず、現状ある3Dプリンタの試みに関して、玉石混合の中から、ありうる話を調査し、その細部をひとつひとつ並べかえて、ある設定を得なさい」。3Dプリンタに関して、小説で使えそうな話題を、お前は、WIREDによって見いださなければならない。

 

すなわちお前が調査すべき3Dプリンタの話題は、WIREDの記事一覧をざっと見た限り、次の通りである。
ハード面に関しては、建築、製剤、食品、医療、芸術、宇宙開発、銃器製造、服飾、インクとなる素材。
ソフト面に関しては、流通問題、普及率、メーカー、3DCADデータの公開、オープンソース化、タグ付けによるモノの履歴、3Dスキャナとの併用。
場所に関しては、工場、現場、商店、卓上、オフィス、家庭、極限空間で、これは使用者を決める要因にもなりうるし、ソフト面の設定を固めてから足並みを揃えないとボロが出やすいあたりになる。

 

今考えてる大枠を伝え忘れたから言っておくが、使用者の一生をかけて延々と出力し続けるマシンについてである。一生分の人生には、誰であれ本になりうる物語がある、みたいな話があるが、これは文字でなく、人生の書物化ならぬ人生の造型化になる。人一人の一生を追いかけながらインタラクティブに入出力を繰り返す仕事というのは、ちょっと正気ではないだろう。死後にログをまとめて短い期間で出力する。ということではなく、リアルタイムで造型物を更新していく作業をここでは目指している。まさに奴隷の仕事であり、かかる時間と献身性を鑑みれば、機械でなければならない必然性がその辺りに仕込めるだろう。この大枠はまだわたしの思いつきだが、とりあえずある骨への肉付けから始めるのがいいだろう。さらに時間が余った場合、WIRED以外のメディアにも手を伸ばしてほしい。記事にならなくとも建築家や芸術家には3Dプリンタの前衛作家も多いだろうし、芸大なんかの展覧会の目録を参照してほしい。キーワード検索で漁れば出てくるだろう。枝葉が見つかれば、あとは本人のホームページを追うこと。人のアイデアとかぶらないように、特に造形作家の細かい情報は仕入れておきたい。そしてこれは海外の事例が主になるだろうが、物によっては、実際に物を作成できる3DCADデータのデータベースもあるだろう。お前に持たせたwifiルータでも、その程度の大きさのデータならダウンロードすることが可能なはずだ。データを展開するソフトウェア、つまりライノセラスなんだが、これは自分で入手してほしい。本当は就職するまでに手に入れておきたかったが、これまでスケッチアップで十分こなせてしまったお前が悪いのだから諦めてくれ。

 

これが3年前の出来事であり、ぼくは今、金沢にいる。

旅行中である。